【この一行を選んだ理由】
大きな声では言えないことだが、私はこの本が好き過ぎて常に読めるようトイレ に置いてある。精神的に(あるいは身体的に)参ってしまうことがあったとき、トイレに入ってこの本を読んでクスっと笑うと身体の緊張がほぐれてリラックスできるのだ。とくにこの一行のある『水タンクを買った母』は秀逸である(もうこのタイトルですら読み出す前から“オモシロ臭”がプンプンしている)。文中の父ヒロシが私は特に好きで、もっと言えばいい加減で考えが及ばないところがあるヒロシに遠慮なくズバズバものをいう家族の風景が、私は好きだ。この回では、母の歯に衣着せぬもの言いに、ヒロシとさくら先生が若干ひるんでいるところが何度読んでも面白い。ちなみにうちではこの本がトイレにあるがゆえ、夫も用もないのにトイレの時間が長くなってしまった。
【投稿者】
鳴海梓さん
【授賞理由】
栄えある第1回受賞一行に「パンツ」が含まれているのはどうかという声もありました。なぜパンツの運命を心配しなければならないのかよくわからないという意見もありました。が、投稿者である鳴海さんの、愉快だったりそうでなかったりする日常の具体性と、そこはかとなくリンクするさくらさんの脱力的作品世界、何より、一番面白い一行を選ぶのだ!というこの本に対する愛情がひしひしと感じられました(オチまでありがとうございました)。というわけで第1回一行アワードに決定です!
2013年7月1日~2013年8月31日の期間に「新潮文庫の100冊」から選ばれた一行を対象とし、厳正なる審査の上、受賞一行を決定致しました。
なお、鳴海さんには信濃八太郎さん描き下ろしの肖像イラスト入り特製帯を巻いた『さくらえび』をプレゼントします!